ponyboy.org

キウイ事変

前にも書いたが、俺の実家は東京都の外れ、町田市鶴川というところだ。ここには鶴川団地というマンモス団地郡があり、中心部に「センター」「セントラル」と呼ばれる2つの商店街がある。思えば、駅前でもないのに商店街が2つ繋がってるって、なかなか凄い。それだけ人が多かったってことなんだろう。実はセントラルは、ウルフルズのPVで知られてたり。

バイタク達

んで、俺が小学生の頃、センターの方の端っこに「つるや」というパン屋というかお菓子屋があった(今は別の店になってるみたい)。店の外には、メダルゲーム(ピカデリーサーカスとか)やテーブル筐体のゲームが何台か置かれていて、いつも子供で賑わっていた。ピカデリーサーカスのベット時と払い出し時の「ガッコン、ガッコン」て音、好きだったなぁ。

そこに、たまに俺らの小学校の先輩で「マルコ」と呼ばれていたヤンキー的な先輩が来ることがあった。確か2級上ぐらいだったんじゃないかと思う。マルコはみんなから恐れられていて(でも男っぽくて尊敬されていた部分もあった)、彼がプレーしているときは皆あまり近寄らずにいた。マルコにはいつもパシリが一人付いていた。両替したりお菓子を買ってきたりするのは、そのパシリ君の役目だった。

4年生の時に、友達のワーヤンといつも通りセンターのみなと屋(いまは日本酒で有名な店になっている)でミリンダを買い、つるやに向かった。当時夢中になっていた「ギャラクシーウォーズ」のプレイを始める。

ふとワーヤンが小さな声で「あ、マルコだ」と、つぶやいた。画面から目を上げて見るとマルコがパシリ君とこっちに歩いてきている。ちょうどプレイも終わり急いで席を立つ俺。マルコはギャラクシーウォーズの隣りにあった筐体に座り、50円玉を重ねてプレイを始めた。俺らは、なんとなくそこに立ったまま、何をするでもなく、ぼーっとマルコのプレーを見ていた。

ワンプレイが終わると、マルコがパシリ君を呼ぶ。「アレ、買ってこい!」と500円札を彼に渡す。小走りに向かいのスーパーに走っていくパシリ君。そのまま2プレイ目を始めるマルコ。俺らは「アレ」が気になってしょうがなかった。ほどなくして、スーパーの袋をぶら下げたパシリ君が戻ってくる。マルコはそれを受け取り、中から「アレ」を取り出した。

果たして「アレ」とは、パックに入った3つのキウイだった。が、当時の俺はキウイという果物の存在は知っていたけれど、実物をちゃんと見たことも、もちろん食べたこともなくて、その時はなんだかわからなかった。マルコは一つを手に取り、おもむろにワシワシと2つにちぎり始める。いびつながらも2つに分けられたキウイ。片方をパシリ君に差し出す。マルコは前歯でこそぐようにして、キウイを食べ始めた。あっという間に半分を平らげ、次の1つをまたワシワシと割る。今度はパシリ君には渡さず、割った2つとも自分で食べた。3つ目を割った時に事は起きた。

「おい!お前らも食えよ!」と俺達に向けて、2つに割ったキウイをマルコが投げて寄越したのだ。それを慌てて受け取る俺とワーヤン。どうして良いかわからずに持っていると「食え、食え!」と追いかけてくるマルコの声。さっき見ていたように、立ったまま前歯でこそぎだす俺とワーヤン。皮も一緒に口に入ってケバケバしたし、味は酸っぱかった。手や口の周りは、汁でビシャビシャ、ベトベト。食べ終わった俺達を見て、彼は「ふふふ」と笑い、またゲームを始めた。俺達はどうしていいかわからずに「…ふふふ」と笑い返し、またぼーっとゲームを見ていた。マルコがゲームを終え、つるやを去った後、妙な恐怖感と興奮とともにワーヤンと家に帰った。

その秋の運動会でマルコが白組の応援団長になり、俺も応援団の一員になった。マルコと話す機会が出来たので、ずっとあたまに引っかかっていた「キウイ事変」の一部始終をマルコに話した。するとマルコは「え?そんな事あったか?」と、全く覚えていなかった。