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フロリダ・プロジェクトを観た

フロリダ・プロジェクト

フロリダ・プロジェクトを観た

以前、友人のブログにて「フロリダ・プロジェクト」という映画のことを知った。そこに書かれていた内容に非常に興味をそそられたので、まずはNetflixやHuluにて検索するも見あたらない。調べてみるとDVDなどは出ているようなのだが、生憎バンコクにアマゾンは無い。どこかの映画館でやってないかとも思い探してみたが、バンコクで上映中の映画館を見つけることはできなかった。

DVDになっているということは、販売してるんじゃなかろうか、と思って平日休みにMBKへ行ってみたらアッサリ発見。いそいそと自宅へ戻って、ビールを用意し、さっそく鑑賞。

トレイラーやネット上の感想などから、恐らく泣くだろうなぁと思っていたのだけれど、いやはや。全く泣かなかった。というか、泣けなかった。

観た人がどれだけいるかわからないけれど、大体のあらすじなどは少し検索すればいろいろと出てくる。フロリダのディズニーランドに近い安モーテルに住む、シングルマザーとその子ども、および周りの人達の話だ。ネット上での感想は…

  • カンヌで大絶賛、アカデミーにノミネート
  • 映像が綺麗(空、色使いなど)
  • 子供の視線で云々
  • 貧困の中でも明るく云々
  • 素晴らしいラスト

あー、うん。俺も、そういう感想も確かに持った。うん。でも、一番感じたのはそこではなくて、圧倒的な「リアルさ」だった。ムーニーの母親であるヘイリーのダメさ、そのダメさにすら気付けないっぷりに息がつまりそうになった。何故かといえば、俺がタイで出会ってきた子達そのままだったからだ。嘘だと思うかもしれないけど、あんな感じの母娘が山ほどいる。あの映画、まんまタイ版を作れると思ったよ。アメリカの現実は、ホントにあんな感じなのだろうか。

つべこべと書くよりも、観てもらうほうがいいタイプの映画だとも思う。しかし、トレイラーはネタバレ入れ過ぎなんじゃないかなぁ…。以下もネタバレありますのでご注意を。

とにかく母親であるヘイリーのダメさと、娘であるムーニー(と子ども達)の無垢さの関係性にどうにもキリキリしてしまう。映画だとわかっているのに、そのまま自分に置き替えてしまってた。娘を愛してはいるけれど、自分の事すらも満足にこなせない(自分を愛することもできていない)ヘイリー。おそらく教育もまともに受けたことがなく、今の環境がどれだけ悪いかということにすら気付けない。もちろんそこからの脱出方法なんて解るはずもない。その日、その時だけの快楽を刹那的に感じながら生きてきた。結果、若くしてムーニーを授かり、なんとかやりくりしながら生き続けている。ふたりで「生きる」ためだけに「生きている」状態。デフォー演じるモーテルの管理人の視線が、ほぼ俺だった。彼は一線を越えなかったけれど、俺は越えてしまったんだよなぁ。そういう人生にガツリと関わった。

ヘイリーがドラッグや酒に溺れていないところも、逆にリアリティがあった気がする。まぁあれで、ドラッグも酒も出てきてたらどうにもならないただのドキュメントになっちゃうのかな。ムーニーに対しての暴力は一切無いけど、他人への罵倒や、元友人への容赦ない暴力=キレやすさみたいなのがスッと出てくるのも、すげーリアルで。ホント、胃がキューってなった。バスルームのシーンが印象的に出てくるけれど、意味がわかるときには、またグワッと胃の中が痛くなる。

ホテルのビュッフェシーンはシビれた。俺、ヘイリーと全く同じ顔するんだろうなぁ、とか思ったし。めちゃめちゃ、いいシーンだった。

この映画のエンディングで「ほんわかした」とか「美しい映像が」みたいなこと書いてる人は、きっと温かい場所で育った人なんじゃないかなぁ、とか勝手に思った(個人の独断と偏見です)。俺には、あのエンディングは残酷に見えて仕方なくて。親友のジャンシーは、まだ救いがある場所へと戻れる。ムーニーは施設へ。ヘイリーはどうするのだろう。母娘の人生はまだ続く。ある意味、ダンサーズ・イン・ザ・ダークのエンディングの方が苦しみが断ち切られるという意味では、楽なんじゃないかと思ってしまったぐらい。あのエンディングシーン、iPhoneでゲリラ的に撮ったらしい。お客さんは実際の観光客なんだろうか。それなら強烈だなぁ。

最終的にムーニーは全てわかってたんだと思う。あの最初に児童相談所の所員が来たあたりから徐々に。横顔のアップのシーンの顔とかわかってる顔だったよね。そして「大人が泣く時がわかる」という台詞。でも、あんな状況の暮らしでも、彼女はとても幸せだったんだろうなぁ。なぜなら、それしか知らないから。ヘイリーに愛されていたから。ヘイリーと二人、安モーテルでの暮らしが全てだったから。最後の涙は、何かが変化することを察知した彼女の声なんだろうか。そこまで彼女は一滴の涙も流さない。今後、彼女がヘイリーになっていくのか、そうでないのかは誰にもわからない。できればあのスパイラルから抜け出してほしい。

いい映画ではあったけれど、好きな映画にはならないかな。胸が痛すぎる。

観終わってから、ムーニーを演じていたブルックリン・プリンスちゃんのインタビューを見て度肝を抜かれた。ものすげぇ子だなぁ…あれをキチンと考えて演技してるのか。むしろ怖いよ、おじさんは。

ヘイリー役のブリア・ヴィネイトは、インスタで監督にスカウトされて2週間演技の勉強を子供達としただけ、って。凄いなぁ。

I’m mad you can’t even see me in the pic 🙄

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あと邦題の「真夏の魔法」は、ちと厳しいんじゃないかねぇ…。